[深掘り] クレールオブスキュール:エクスペディション33 考察|現代アクションが「パリィ」に依存する必然性と、SEKIROから継承された快感の正体

クレールオブスキュール:エクスペディション33は、2025年を代表するJRPGへのラブレターとして世界累計800万本という驚異的な記録を打ち立てた。本作がターン制コマンドバトルという伝統的な枠組みの中に「パリィ」を組み込み、成功を収めた事実は、アクションゲームにおける防御システムの立ち位置が根本から変化したことを象徴している。かつては一部の格闘ゲームや硬派なアクションのみに許された「刹那の攻防」が、今やジャンルの垣根を超えてプレイヤーの心臓を掴んでいるのである。

Clair Obscur: Expedition 33 公式カバー

▲ 公式カバーアート (提供: IGDB)

まずは、本作を中心とした近年のパリィ採用タイトルの構造を整理しよう。

項目 詳細情報
代表的タイトル クレールオブスキュール:エクスペディション33
核心システム ジャストガード/弾き(パリィ)
ゲームデザインの源流 SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE
主要な快感要因 主体性の奪還、敵攻撃の強制停止、カタルシス

クレールオブスキュール:エクスペディション33と「SEKIRO」が繋いだ血脈

本作の開発陣が公言している通り、クレールオブスキュール:エクスペディション33のバトルデザインはフロム・ソフトウェアの金字塔「SEKIRO」から多大なインスピレーションを受けている。この影響は本作のみならず、「九日ナインソール」や「Sifu」、「Lies of P」といった近年の高評価タイトルに共通する現象だ。かつてのパリィは、デモンズソウルに代表されるように「リスクはあるがリターンの大きい一部のテクニック」に過ぎなかった。しかし、SEKIROはそれを「体幹を削るための必須の攻防」へと昇華させたのだ。

このパラダイムシフトにより、防御は「攻撃を耐え忍ぶ受動的な時間」から「敵の勢いを逆手に取る能動的な攻撃」へと変貌を遂げた。クレールオブスキュール:エクスペディション33は、この能動性をターン制RPGに持ち込むことで、コマンドバトルの静的な時間にアクション特有の緊張感と報酬系を同期させることに成功したのである。プレイヤーは単にコマンドを選ぶだけでなく、画面の予兆を凝視し、自らの手で運命を切り拓く感覚を手に入れた。

Clair Obscur: Expedition 33 公式アートワーク

▲ 公式アートワーク (提供: IGDB)

歴史的文脈から見る「シノギ」と「一閃」の合流

ゲームデザインの歴史を紐解けば、この「攻防一体」の思想はカプコンやプラチナゲームズの系譜に強く刻まれている。2001年の「鬼武者」における「一閃」が持っていた重厚なカウンターの快感と、2013年の「メタルギア ライジング リベンジェンス」における「シノギ」が提示した「赤い閃光による予兆と連続弾き」の快感。これらが宮崎英高氏の掲げる「困難の克服と達成感」という哲学と混ざり合い、現代の洗練されたパリィシステムへと結晶化したと考えられる。

特に「メタルギア ライジング リベンジェンス」の開発に携わった田浦貴久氏が語る「前に進むためのシステム」という概念は重要だ。プレイヤーが敵の猛攻にひるまず、むしろ攻撃が激しければ激しいほどパリィによって反撃の糸口を掴める設計は、現代のゲーマーが求める「圧倒的な暴力に対する、テクニックによる支配」という欲求に合致している。クレールオブスキュール:エクスペディション33は、このアクションゲーム的な哲学をRPGの文脈で再定義したと言えるだろう。

Game’s Compass Perspective: パリィは「自由」への唯一の鍵である
敵の連続攻撃という「抑圧」に対し、パリィは「主体性の奪還」という最大の解放感をもたらす。現代のゲームがパリィを求めるのは、単なる流行ではなく、高難易度化するバトルにおいてプレイヤーがシステム上の奴隷にならないための、最も合理的な解決策だからだ。

「待ち」のジレンマと次世代への展望

一方で、パリィには「受動的な待ち」を強いるという構造的な弱点も存在する。メトロイドシリーズの「メレーカウンター」が探索のテンポを削いでしまう懸念があるように、汎用的な雑魚敵との戦闘においても常にパリィを前提とすると、ゲームプレイが「後出しジャンケン」に陥るリスクがある。この課題に対し、近日発売予定の「炎姫」や「BAKUDO」といったタイトルは、よりデフォルメされた視覚的予兆を用いることで、パリィを「スポーツ的でカジュアルなリズム」へと昇華させようとしている。

クレールオブスキュール:エクスペディション33の成功は、この「防御という名の攻撃」が今後もアクション、RPGを問わず標準装備となっていく未来を確定させた。フォトリアルな世界での緊迫感あふれる弾きから、アニメ調のビジュアルでの爽快なジャストアクションまで、パリィは今、最もホットな差別化要素として進化を続けている。

クレールオブスキュール:エクスペディション33 公式ページ(Steam)

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