ネバーネス・トゥ・エバーネスは、2026年4月29日のリリース以来、その広大なオープンワールドと独自の異象調査というテーマで多くのプレイヤーを魅了している。本作の舞台である超自然都市ヘテロシティは、ただ歩くだけでも発見に満ちているが、中でも異彩を放っているのが刑務所という存在だ。一般的にオープンワールドゲームにおける刑務所は、犯罪行為に対するペナルティや一時的な拘束場所としての役割が強い。しかし、本作における刑務所は、驚くべき多様な脱出方法が用意された、一種の脱獄テーマパークへと変貌を遂げている。
▲ 公式カバーアート (提供: IGDB)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | ネバーネス・トゥ・エバーネス |
| 開発/運営 | Perfect World Games |
| 対応プラットフォーム | PC / PlayStation 5 / iOS / Android |
| ジャンル | 超自然都市オープンワールドRPG |
| 価格 | 基本プレイ無料(アイテム課金あり) |
緻密に練られた「死んだふり」ルートの不条理な面白さ
本作の刑務所生活で最もプレイヤーを困惑させ、かつ楽しませてくれるのが、生と死の狭間でと呼ばれる脱獄ルートだ。これは文字通り、主人公が死んだふりをして医務室から運び出されるという、映画さながらの奇策である。このルートを開始するには、まず夜間の自由時間に囚人たちと交流し、特定のキャラクターを崇拝する囚人の願いを聞き入れる必要がある。刑務所内という閉鎖空間でぬいぐるみを調達するという、一見すると無意味な「おつかい」が、脱獄の鍵となる劇薬への導線になっている点は、本作のクエスト設計の妙と言えるだろう。
入手した麻痺薬を医務室で自らに注射する際、プレイヤーにはステルスゲーム特有の緊張感が求められる。しかし、その緊張感はあくまでエッセンスに過ぎない。本質的な面白さは、運び出されるボートの上で看守たちが交わす、どこか間の抜けた会話と、その隙を突いて海へとずるりと逃げ出すシュールな光景にある。真面目に服役すれば数日で出られるにもかかわらず、あえて多臓器不全を装うという過剰なまでの労力投入。この温度差こそが、ヘテロシティという異常が日常に溶け込んだ街の空気感を象徴しているのだ。
ネバーネス・トゥ・エバーネスにおける正統派ステルスの緊張感
奇策がある一方で、闇に溶け込むルートのように、ステルスアクションとしての手応えを重視した設計も存在する。このルートは、昼間の運動時間に「ヤドカリ」という名のいじめられている囚人を助けることから始まる。彼女の持つ物体移動の異能が、のちに主人公の懲罰房からの脱出をサポートするという展開は、RPGらしい因果応報の楽しさを提供している。スプーンで電気系統を破壊し、暗闇に乗じてロビーへ侵入する一連の流れは、シンプルながらも「脱獄している」という実感を強く抱かせる。
▲ 公式アートワーク (提供: IGDB)
特筆すべきは、屋外へ出た後のライティングと看守の巡回ルートのバランスだ。判定は決して理不尽ではないが、不用意に動けば即座に発見され、拘留期間が延長されるというペナルティが適度なスパイスとなっている。死んだふりのようなイベント重視のルートに対し、自身の操作技術で活路を切り開くこの正統派ルートが存在することで、刑務所というコンテンツに厚みが生まれている。プレイヤーの選択肢を尊重し、複数の解法を用意するというオープンワールドの理想が、このような「本来行かなくてもいい場所」でも徹底されている点は高く評価できる。
バグを仕様に変える「ごり押しジャンプ」と開発の懐の深さ
ネバーネス・トゥ・エバーネスが持つ遊び心の真骨頂は、身体能力だけを駆使して塀の外へ出る、通称ごり押しジャンプ脱獄にある。これは運動場のフェンスやコンクリートブロックを利用し、意図的に角度をつけた2段ジャンプを繰り返すことで、本来は進入不可に見える有刺鉄線の上を歩いて脱出する方法だ。一見するとゲームの穴を突いたグリッチのように思えるが、この方法で脱走に成功した瞬間に「通行可能エリア」という実績が解除される演出には、多くのプレイヤーが驚かされたことだろう。
この仕様は、開発チームがプレイヤーの「あそこへ行けるのではないか」という好奇心をあらかじめ予見し、あえて遊びとして残したことを示唆している。たとえ見た目が不自然であっても、プレイヤーが試行錯誤の末に辿り着いた結果を「正解」として受け入れる。この懐の深さこそが、ヘテロシティを単なるデジタルな箱庭から、生命力あふれる都市へと昇華させている。SNSで話題となることを計算したかのようなこの設計は、現代のオープンワールドRPGにおけるコミュニティとの対話の一形態とも言えるだろう。
寄り道の積み重ねが都市のリアリティを形作る
刑務所内には、他にも食堂のスプーンで壁を掘るルートや、囚人服を繋ぎ合わせてロープを作るルートなど、王道の脱獄劇がいくつも散りばめられている。これら全てのルートを網羅しても2時間程度というコンパクトさは、プレイヤーにとって負担にならず、むしろ積極的に犯罪を犯してでも刑務所へ「遊びに行きたくなる」動機を生んでいる。犯罪システムという、通常は忌避されるべき要素をエンターテインメントへと昇華させた手腕は見事である。
こうした細部へのこだわりは、メインストーリーとは直接関係のない場所であっても、街の一部としての役割を全うさせようという強い意志を感じさせる。ネバーネス・トゥ・エバーネスが目指しているのは、効率的にクリアされるゲームではなく、プレイヤーがその街に住み、寄り道をし、自分だけの物語を見つける場所なのだろう。たとえそれが塀の中であっても、ヘテロシティの自由な風は止むことがない。次の脱獄では、また新しいルートが見つかるかもしれない。そんな期待を抱かせてくれるだけで、この刑務所は「成功」していると言える。
[ネバーネス・トゥ・エバーネスが提示する「罰」の新しい形]
本作における刑務所は、プレイヤーを制約する負の空間ではなく、発想の転換によって無限の遊びが生まれるキャンバスである。脱獄という行為を通じて、ゲーム内の物理法則やNPCの反応を試し、開発者の遊び心と対峙する。この体験こそが、単なるオープンワールドRPGを超えた、本作独自の都市体験の核心に他ならない。
最終コンパス指数: 9.2 / 10