ソウルシリーズの原点として知られる『デモンズソウル』の初期開発段階において、一人称視点でプレイするオプションが検証されていたことが判明した。著名なデータ研究者であるランス・マクドナルド氏により、2007年のSony Computer Entertainment主催イベント「Gameshare 4」にてジャパンスタジオPD#3が発表したプレゼンテーション資料および初期開発映像が発掘・公開された。約20年前の貴重なプロトタイプ資料は、現在のソウルライクジャンルを確立した名作の試行錯誤の歴史を物語っている。
▲ 公式カバーアート (出典: IGDB)
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象タイトル | デモンズソウル(プロトタイプ段階) |
| 資料公開元 | ランス・マクドナルド(2007年プレゼン資料発掘) |
| 判明した主な仕様 | 一人称視点モード、固定カメラ操作、未登場エネミー |
| オンライン概念 | 非同期オンラインとオフライン要素の融合 |
初期の『デモンズソウル』に存在した一人称視点と独自のカメラワーク
公開された映像の中で最も目を引くのは、プレイヤーが一人称視点で敵と交戦するゲームプレイの様子である。製品版の『デモンズソウル』では、自由度の高い三人称視点の追従カメラとロックオン機能を特徴としていたが、プロトタイプ版では臨場感を高めるための切り替え機能として一人称視点が検討されていた。この一人称モードは、狭く暗闇に包まれたダンジョン内での没入感を向上させる設計の一環であったと推測される。
また、初期の三人称視点仕様においても、製品版とは異なる制御メカニズムが採用されていた。当時のカメラはプレイヤーの後方に固定され、左アナログスティックによる平行移動やバックステップを中心とした移動システムが組み込まれていた。マクドナルド氏はこの操作性について『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』の三人称視点システムからの強い影響と類似性を指摘している。最終的にこの不自由なカメラ制御は排され、より直感的な360度自由カメラへとブラッシュアップされた。
未実装モンスターと『ダークソウル』への継承
プロトタイプ映像には、製品版の『デモンズソウル』には登場しなかった幻のモンスターたちも収められていた。その代表例が「蛇の頭を持つ人間型の敵」である。このエネミーは本編には採用されなかったものの、後に事実上の続編となる『ダークソウル』の「センの古城」に登場する蛇人としてデザインが昇華・再利用されたことが伺える。
さらに、デザイン段階で存在していた一般的な「クロコダイル」など、ダークファンタジーの世界観を模索する過程の多様な試行錯誤が確認できる。一方で、他プレイヤーの死亡痕跡や動きが表示される「ゴーストシステム」など、後のソウルシリーズにおける中核的なオンライン体験の基礎はこの時点で既に提示されていた。製品版に至る過程で何を削ぎ落とし、何を洗練させたかの軌跡が克明に記録されている。
▲ ゲームプレイおよび公式メディア (出典: IGDB)
オンライン設計思想とサウスパークを用いたユニークなプレゼン資料
ゲームメカニクス以外にも、当時のジャパンスタジオPD#3が作成したPowerPoint資料には興味深いスライドが含まれていた。海外アニメ作品『サウスパーク』の著名なエピソード「Make Love, Not Warcraft」から、過度にMMORPGに没頭するゲーマーのスクリーンショットが引用されていたのである。
開発チームはこの画像を「従来のMMORPGゲーマーにおけるステレオタイプなイメージ」の例として挙げ、それに偏重しない新たなゲーム体験の創造を目指していた。オフラインRPGの濃密な世界観とオンライン要素を融合させることで、過度な時間の束縛や人間関係の負担を排したゲームバランスを模索していた証拠と言える。この徹底したアンチテーゼこそが、後の「非同期オンライン」という革命的システムを生み出す原動力となった。
試行錯誤の末に削ぎ落とされた『デモンズソウル』の美学と革新性
初期段階で一人称視点や固定カメラが検証されていた事実は、アクション性の確立における重要な分岐点であったことを示している。既存のFPSや洋ゲーRPGの操作体系を安易にそのまま踏襲せず、何を残し何を排除するかを徹底的に精査した結果が、現在の孤高の作品性へと結実した。過去の発掘資料から紐解かれる開発思想は、ソウルライクという独立したジャンルの原点を再評価する上で極めて高い価値を持っている。
最終コンパス指数: 8.8 / 10