『紅の砂漠』が描き出す広大なパイウェル大陸は、単なる視覚的な美麗さを誇るだけの舞台ではない。2026年8月24日に開催されたカンファレンスにて、Pearl Abyssは自社開発の次世代基盤『BlackSpace Engine』がどのように200平方kmに及ぶ連続世界を稼働させているか、その詳細な技術と環境設計の神髄を明かした。単にアセットを敷き詰めるのではなく、プレイヤーの視線誘導と探索意欲を最優先に据えた綿密な設計思想がそこにはある。
▲ 公式カバーアート (出典: IGDB)
| 開発元 | Pearl Abyss |
| 対応プラットフォーム | PC / PS5 / Xbox Series X|S / Mac |
| 採用エンジン | BlackSpace Engine(自社製) |
| マップ総面積 | 約200平方km(シームレス接続) |
| 主要技術 | 動的GI、GPU駆動プロシージャル、Stateful ProxyLOD |
リアルを捨てて獲得した『遊べる自然』のデザイン原則
オープンワールド開発において陥りがちな罠が、過剰な現実の再現である。本物の自然環境は木々が日光を奪い合う結果として視界を遮り、道迷いを生み出しやすいため、ゲームプレイにとっては必ずしも最適ではない。『紅の砂漠』の開発チームは、現実の森をそのまま持ち込むことをやめ、プレイヤーの視線が自然にランドマークへと誘導される『遊べる自然』へと方針を大きく転換した。
フィールドの植生は移動、発見、戦闘という3つの明確な用途に基づいて密度が厳密に作り分けられている。さらに、あえてディテールを落とした視覚的に静かな領域を配置することで、重要なロケーションとの強烈なコントラストを創出。プレイヤーが尾根に立った際、UIマーカーに頼ることなく直感的に探索対象を3つ認識できるような環境構造が完成した。
▲ ゲームプレイおよび公式メディア (出典: IGDB)
BlackSpace Engineが実現する200平方kmの完全シームレス
『紅の砂漠』の広大な世界を支えるのが、独自のBlackSpace Engineである。世界を2万以上の独立管理単位に分割しつつ、近距離(1km)、中距離(3km)、遠距離(10km)の3レンジで描画を完全に最適化。CPUがマルチスレッドでフレーム供給を行い、GPUが非同期コンピュートを駆使して可視性評価や大量の植生描画を並列処理する構図を確立した。
植生においては100種以上のインポスターを用意し、1シーンあたり最大50万インスタンスを描画しながらも高いフレームレートを維持する。さらに物理ベースの大気散乱モデルや事前計算なしの動的グローバルイルミネーション、高度な流体シミュレーションが統合され、天候や時間の変化が空間全体へシームレスに伝播する。
破壊と変化を地平線まで刻むStateful ProxyLOD
プレイヤーが世界に与えた影響を遠景にも反映させるため、エンジンには『Stateful ProxyLOD』が組み込まれている。遠方の建造物や地形を軽量メッシュに置き換える際、クエストの進行状況や破壊状態のデータを保持させることで、10km先からでも現在の世界の姿が正確に描画される。遠くに見える場所には必ず到達でき、そこでの行動が世界を恒久的に変えるという強い説得力を生み出している。
また、草木は単なる背景ではなくインタラクティブなゲームプレイ要素として機能する。共通の物理入力フレームワークにより、キャラクターの接触によるしなり、攻撃による切断、木を掴んで登るアクションなどがリアルタイムかつ動的に処理される。
『紅の砂漠』が証明した独自エンジンの優位性と探索体験の本質
膨大なアセットの物量競争に陥ることなく、プロシージャル生成とサンプリングルールの徹底によって『探索する理由』を大陸全体に敷き詰めた設計力が見事である。汎用エンジンの制約を脱し、自社製BlackSpace Engineで超長距離描画と微細な物理リアクションを完全同期させた技術的達成は、今後のオープンワールド制作における新たな指標となるだろう。
最終コンパス指数: 9.4 / 10