[アークナイツ:エンドフィールド] 15万個の音響効果を制御するサウンドエンジニアリングの極致

アークナイツ:エンドフィールドにおける『集成工業システム』は、プレイヤーが広大な自動化プラントを建設し、無数の設備を動的に稼働させる独創的なゲームプレイを提供する。しかし、画面内にひしめく数百から数千の機械が同時に発する稼働音や大規模な環境音をどのように制御し、快適なパフォーマンスと没入感を両立させているのだろうか。開発を手掛けるHypergryphのオーディオプログラマーが明かした技術的アプローチから、音響設計の緻密な構造を解き明かす。

Arknights: Endfield レビュー、概要、および公式カバー

▲ 公式カバーアート (出典: IGDB)

対象タイトル アークナイツ:エンドフィールド
開発元 Hypergryph / GRYPHLINE
対応プラットフォーム PC / PS5 / iOS / Android
サウンドミドルウェア Wwise (Audiokinetic)
主要オーディオ技術 Auto-Defined SoundBanks / Cluster Emitter / Swarm Emitter

アークナイツ:エンドフィールドが直面した15万個のサウンドオブジェクト問題

PCやPS5だけでなくモバイル端末(iOS/Android)を含めたマルチプラットフォーム展開を行うアークナイツ:エンドフィールドにおいて、オーディオメモリの制限は極めて厳しい課題であった。特にモバイル環境でのオーディオ割り当てメモリはわずか50MB以内に抑える必要があり、その制約下で15万を超えるサウンドオブジェクトを効率的に管理しなければならなかったのである。

従来のサウンド開発プロセスでは、サウンドデザイナーが手動でサウンドバンク(オーディオデータを格納するファイル)を分割管理していた。しかしこの手法は膨大な工数を要する上に人為的エラーが発生しやすく、再生頻度の低いいわゆるレアな音源まで頻繁に読み込まれてメモリを圧迫する要因となっていた。この事態を打開すべく導入されたのが、Wwiseの『自動定義サウンドバンク(Auto-Defined SoundBanks)』機能である。

本機能を導入したことで、特定のイベント発生をトリガーとして必要なサウンドバンクが自動生成およびロードされる仕組みが構築された。これにより手動分割の手間が解消されただけでなく、不要なデータの読み込みが削減され大幅なメモリ節約を達成。実機での長時間起動テストにおいてもメモリ使用量は逼迫することなく、極めて安定した推移を見せている。

独自アルゴリズムで負荷をカットする音源統合システム

サウンドパフォーマンスの最適化において、もう一つの難所となったのがCPU処理負荷のコントロールである。オーディオミドルウェア上のCPU使用率が100%を超過すると、ゲーム本体は正常に動作していても効果音の音切れや遅延が発生する。アークナイツ:エンドフィールドでは、この問題に対処するため独自の音響アルゴリズムが組み込まれている。

広範囲に及ぶ環境効果である動的侵蝕領域では、従来用いられていた多重位置シミュレーション(MultiPosition方式)ではなく『Cluster Emitter』という独自システムを採用した。これはプレイヤーと対象オブジェクトとの距離に応じて代表となるエミッター(音源放出源)を動的に計算・設定する技術であり、広がりを持つ音の不自然な急変を防ぎながら計算負荷を劇的に抑え込むことに成功している。

また、集成工業システムで無数の設備が密集するエリアでは『Swarm Emitter』という手法が大きな成果を上げている。プレイヤー周囲の空間を扇形のセクターに分割し、各セクター内の稼働中設備数や距離に基づいて位置を平均化。代表する音源ポイントを生成して合成されたループサウンドを再生する。近くの機械音はそのまま維持しつつ、遠方の群集音を統合することでエミッター数を最小限に抑え、処理負荷の低減と重厚な工場稼働音の両立を実現した。

Arknights: Endfield ゲームプレイ、特徴、およびスクリーンショット

▲ ゲームプレイおよび公式メディア (出典: IGDB)

アークナイツ:エンドフィールドが示す次世代オープンワールドの音響最適化
工業自動化という膨大なオブジェクト数を抱えるゲームデザインにおいて、音響の負荷軽減はグラフィック描画と同等以上に高度なエンジニアリングが要求される。自社アルゴリズムによるエミッターの動的統合とミドルウェアの自動化機能を高度に融合させた本作の手法は、今後の大規模オープンワールド開発における重要な金字塔と言えるだろう。

これらの先進的な音響技術の詳細は、Audiokinetic公式ブログでも解説されている。プレイヤーが意識することのないバックグラウンドで緻密に計算されたサウンドシステムが、タロIIでの過酷かつ没入感あふれるゲーム体験を盤石なものにしているのだ。

最終コンパス指数: 9.2 / 10

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