任天堂が送るリズムアクションの金字塔が、待望の復活を遂げた。シリーズ最新作となる『リズム天国 グルーヴ』は、長きにわたる沈黙を破り、音楽とゲームの幸福な結びつきを改めて証明する記念碑的な一本に仕上がっている。本作は、流れてくるノーツを目で追う一般的なリズムゲームとは一線を画し、プレイヤーの「聴覚」と「リズム感」そのものに直接訴えかける独自の哲学を貫いている。
▲ 公式カバーアート (出典: IGDB)
| 対応機種 | Nintendo Switch 2 |
| 開発・販売 | 任天堂 |
| アートディレクター | 竹内高 |
| 音楽プロデューサー | つんく♂ |
| 収録アーティスト | Ado ほか |
| プレイ人数 | 1〜複数人 |
『リズム天国 グルーヴ』が提示する「引き算の美学」とゲームプレイの極致
本作の最大の特徴は、徹底的なまでにシンプル化された操作体系にある。使用するボタンは最大でも2つ、基本的にはたった1つのボタン操作だけで、すべてのミニゲームが完結する。他社のリズムゲームのように、複雑な譜面を処理するために指先を酷使する必要は一切ない。画面上に流れる情報に惑わされることなく、純粋に音の波に身を委ねることができるデザインは、まさにシリーズの伝統を受け継ぐ「引き算の美学」の極みと言えるだろう。
収録されているミニゲームは、どれも個性的でユーモアに溢れている。例えば、画面をスクロールする文字に合わせてタイミングよくボタンを押す「A to 努力(A for Effort)」では、成功するたびに飲料のストックフォトが脈絡なく表示されるなど、プレイヤーの視覚を意図的に惑わす演出が施されている。視覚的なノイズが障害となるため、プレイヤーは自然と目を閉じ、耳から入るビートだけに集中することになる。この「目をつぶってプレイした方が上手くいく」という体験こそが、本作の本質を雄弁に物語っている。
『リズム天国 グルーヴ』が提示する音と映像の完璧な共感覚
『リズム天国 グルーヴ』には、それぞれ4つのユニークなミニゲームで構成された全16のステージが用意されている。各ステージの最後には、それまでに学んだリズム要素を巧みに組み合わせた「リミックス」ステージが待ち受けており、プレイヤーの総合的なリズム感が試される。また、本作にはアクションの合間に靴を飛ばすメイド イン ワリオ風のマイクロゲームや、変則的な3/4拍子のメトロノームに合わせて呪文を唱えるRPG風のストーリーモード「ビートスペル」など、飽きさせない工夫が随所に散りばめられている。
▲ ゲームプレイおよび公式メディア (出典: IGDB)
音楽とゲームプレイの境界線を消し去るデザイン
本作のプレイフィールは、名作『テトリス・エフェクト』がもたらした共感覚的な没入感に近い。しかし、ゲームプレイの副産物として音楽が生成されるあちらのスタイルに対し、本作は「音楽がゲームそのものを先導する」という真逆のアプローチを採る。プレイヤーが覚えるべきルールは画面内のグラフィックではなく、流れる曲のテンポとトリガーとなる効果音そのものである。これにより、プレイ中の脳内では「ゲームを遊んでいる」という感覚が消失し、自身が音楽の一部として機能しているかのような錯覚さえ覚える。
プロと初心者、双方を満足させる精密な判定と優れたUX
操作が極めてシンプルな一方で、判定の厳しさは本格的だ。多くのリズムゲームが入力ラグに対する救済措置を設けるなか、本作はプレイヤーにミリ秒単位の正確性を要求する。そのため、ドック経由のTVモードよりも、遅延を最小限に抑えられる携帯モードでのプレイが推奨されているほどだ。この一切の妥協がない設計が、カジュアルな見た目とは裏腹に、ストイックなゲームとしての深い味わいを生み出している。
| 優れている点 | つんく♂氏監修による高品質なオリジナル楽曲、Ado氏ら豪華アーティストの参加、2ボタンのみで構築された奥深い操作性、携帯モードでの極めて低い表示遅延 |
| 懸念される点 | TVモード時のオーディオ遅延による判定のズレ(携帯モード推奨)、ミリ秒単位のシビアな判定が人を選ぶ可能性 |
『リズム天国 グルーヴ』が示す現代リズムゲームの最適解
複雑化の一途をたどる現代の音楽ゲーム市場において、操作ボタンを絞り込むことで「音を聴く」という原点に回帰させた任天堂の手腕は見事である。本作は単なる娯楽の枠を超え、変則的な拍子やオフビートといった本格的な音楽理論を感覚的に学べる教育的側面も持ち合わせている。デバイスの進化がもたらす遅延問題に対しても、あえて「携帯モード推奨」と明示することでプレイ体験の質を担保する姿勢は、コアゲーマーから高い信頼を獲得するだろう。
最終コンパス指数: 9.2 / 10